Introduction

私たちの関係性は、一体誰が決めるのだろう?
確かな“家族”として暮らす、
4組の同性カップルの愛と日常の記録

同性婚が認められていない日本にも、子どもを育てている同性カップルの「家族」はたくさん存在します。
しかしその大多数が、差別や偏見を懸念し、関係性を隠して暮らしています。
そんな「見えない」家族のことを知ってもらいたいと
4組の「子どもを育てている/子どもを望む」同性カップルの日常をカメラに収めました。

精子提供をしてもらった友人と本人の両親たちと一緒に、生まれたばかりの赤ちゃんを育てるカップル。
ステップファミリーになるために同棲を始めたシングルマザーと同性のパートナーのカップル。
長年不妊治療に時間もお金も心も注いできたが、様々な「期限」にプレッシャーを感じているカップル。
精子バンクを通じた精子提供で生まれ、育ててきた娘がまもなく成人を迎えるカップル。

4組4様の「家族」の選択のなかにある、子どもへの愛情、子育ての悩み、未来への願い……。
「ふたりのまま」の思いに耳を傾けます。

Trailer

予告編動画

「この子の親です、って胸を張って言える日は来るのかな。」

———私たちのままの、日々の記録

Background

「多様な形の家族」を取りまく日本の社会

日本で同性パートナーシップ制度が渋谷区・世田谷区から始まったのが2015年11月。
今年で10年になります。
同制度は全国の自治体に広がり、人口カバー率9割を超えましたが、
この制度だけでは法的に関係性が保証されるわけではなく、
婚姻関係に紐づく様々な権利も認められません。
そこで今、同性婚が認められていないことが憲法違反であることを問う
「結婚の自由をすべての人に」訴訟も全国の地裁から起こされています。

一方、今年2025年2月には、同性カップルをはじめ、法的婚姻関係にはない人が、
第三者からの提供精子・卵子を使った治療を
医療機関で受けることを禁止する法案が国会に提出されました
(2025年6月現在、同法案は実質見送りとなっています)。これは実質的に、LGBTQ+のファミリー、
そしてそのなかで育ってきた子どもの存在を否定するようなものです。
こうした社会的背景のなかで、カミングアウトをせず、
存在を隠して生きざるをえないLGBTQ+ファミリーは日本に多く存在しています。

About Family

映画に出演している4組の家族について

今回撮影させてもらった方々も、普段、
周囲の安心できる範囲でしかカミングアウトをしていません。
一部の方は映画の中でも、声の出演のみで顔を映さないようにしています。
それでも、一人ひとりの家族の選択が尊重される未来を子どもたちへ
繋ぐために出演してくださった皆さんに深い敬意と感謝の意を表します。
鑑賞いただく皆さんにも、出演者の皆さんのプライバシーに配慮いただき、
身元を詮索したり、誹謗中傷することはご遠慮くださいますよう、お願いいたします。

Story.1

待望の赤ちゃんが生まれたばかりのカップル。精子提供をしてもらった友人と、本人たちの両親と一緒に子育てをしている。子どもの愛しさに笑顔があふれる一方、育児・家事・仕事のバランスには苦戦することも。

Story.2

東京と大阪で遠距離恋愛をしていたが、家族になるために同棲を始めた年の差カップル。小さな娘とステップファミリーになるための奮闘が始まる。時に泣かれながらも、オムツを替えたり歯を磨いたり、少しずつ暮らしを育んでいく。

Story.3

子どもが欲しくて長年不妊治療に時間もお金も心も注いできたが、なかなか実らず、残る受精卵は2つ。年齢的な制約と、国の特定生殖補助医療法案による「期限」とに不安とプレッシャーを感じている。

Story.4

精子バンクを通じた第三者の精子提供で生まれ、育ててきた娘がまもなく成人を迎えるカップル。恋愛の話など“大人”の会話も出てきて、巣立ちに、うれしさと寂しさが入り混じる。同時に、同性同士の親に育てられたことについて、娘がどう思っているのか、成長した今こそ聞きたいと思っている。

Comment

子どもが生まれて育児と家事の分担で悩む、子どもが高校の寮で暮らし始めたので安心して飲みに行ける、同居相手の幼児に入浴や添い寝の時に泣かれる、20年来続けた妊活の幕引きへの不安……すべてのカップル・ファミリーに共通する葛藤や思い。同性カップル・ファミリーの生活もリアルに描く。家族や親子にはいろいろなカタチがある。
そこには一緒にいるメンバーへの信頼と情愛という共通項がある。多様な家族の尊重というメッセージが伝わる優れたドキュメントだと思う。

———二宮周平

立命館大学名誉教授 家族法

自然に子どもを授かっていたら知らないままであろうさまざまな感情が、この映画の中に散りばめられている。出生数が著しく減り続ける日本で、大きな覚悟を持って妊活や子育てに取り組んできた女性カップルたちのことを、ぜひ知っていただきたいです。

———伊藤ひろみ

プライベートケアクリニック東京
精子バンク部門マネージャー

子どもがほしい。大切な人と生きていきたい。
このシンプルな願いを叶えるために、それぞれの日々を一生懸命に生きている。

それなのに彼女たちはどうして、こんなにも複雑でむずかしい状況に置かれているのだろう。

———佐々木ののか

文筆家

少子化が叫ばれ、子どもを産ませるための圧力はかけるのに、「ふつうの家族」に当てはまらなければ排除され、いないことにされる。そんな歪な社会のなかで、すでに多くの女性同性カップルが子どもを持ち生活しています。カタチやイメージの議論をする前に、今すでに同じ社会を生きている家族がいることに目を向けてほしい。当事者のリアルを伝えるこの映画を応援します。

———松岡宗嗣

一般社団法人fair代表理事

家族というのはステイタスではなく、プロセスである。当事者が語るとおり、家族とは決して当たり前の状態ではない。傷つけ合いながらも、あきらめきれずに手を伸ばし合う、その不断の試みだけが私たちをひとつに結びつけて家族にする

——— この映画を観ながらそう確信した。
この映画はマイノリティの物語ではない。
むしろ家族の本質を描いていると私は思う。

———山口真由

信州大学特任准教授 法学博士

ふつうの家族とふつうじゃない家族の境界線はどこにあるんだろう?その線は誰が引くのだろう?
ささやかな幸せを求める家族たちの足元の、どこにもそんな線は見当たらないでしょう。
あたりまえの家族の姿をみんなで見守りたくなる映画です。

———東海林毅

映画監督

「かぞくをするって誰にとっても大変なこと。」
かぞくをみる医者「家庭医」としても、かぞくをする一人の人間としても日々そう感じています。それなのにかぞくの形によってさらに過剰な負担/労力がかかる現状があります。映画でありのままの姿を見せてくれたカップル・かぞくに心から感謝します。
多様なかぞくが可視化されることは未来を絶望しないで済む子どもを増やし、そのかぞくに希望を与える。
いろんなかぞくのあり方は今と未来のだれかの支えになる。
そのだれかはあなたの大切な人かもしれません。
ありのままでいろんなかぞくが支え合える社会が実現されるには様々なステップが必要ですが、そのために私を含め一人でも多くの人が歩みを進められるよう願います。この映画にはそれを叶える力があると感じます。

———久保田希

医師 にじいろドクターズ

時代は変わったとか、海外ではどうだとか、伝統がなんだとか、世間のオトナたちが理屈や主張をぶつけ合ってる一方で、そんなことはお構いなしにこの世に生まれ、愛を必要としている子どもがいる。
その子を愛したい、育てたい、かぞくになりたいと、切に願う人達がいる。
それ以外に必要なもの、大事なことってなんなんだろう?
『家族』という称号をいつまでも一部の属性の人にしか認めたくない人々に改めて問いたくなった。

———キニマンス塚本ニキ

翻訳者・ラジオパーソナリティ

Staff

長村さと子

監督・撮影: 長村さと子

一般社団法人こどまっぷ共同代表として、LGBTQ+当事者で子どもを望む、
子育て中の家庭を中心に、長年にわたり相談支援を行ってきた。
自身も同性のパートナーとともに暮らし、
2021年には自ら声を上げ足立区ではじまった
パートナーシップ・ファミリーシップ制度に登録し第一号に。
長年の妊活の末に一児の母となり、レズビアンで母親の立場から、
すべての女性が生殖補助医療を受けられる社会を目指してロビー活動を続けている。
また、多様性に開かれた街・東京新宿二丁目を拠点に、
ジェンダー・セクシュアリティ・人種・障害などにかかわらず、
子どもから大人まで誰もが安心して過ごせる居場所をつくることを目指し、
飲食店を経営している。

監督・撮影・編集:長村さと子

編集:内田尭

編集協力:あまねしのぶ

撮影協力:高畑洋平/澄毅/タバタユミ

音楽:端山奏子

主題歌:Siraska

日本語字幕:茂田まみこ

宣伝:アーヤ藍/高木真寿美

製作・配給:一般社団法人こどまっぷ

2025年 / 日本 / DCP / 88分 / ドキュメンタリー

Supporters

株式会社アカルク

株式会社メディブリッジ

松中権

鈴木朋絵

出井陽子

あきひか

QT

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Umi

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水曜子

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塩井マメオ

菊池さとみ&有紗

まなつ

この国に“いないこと”にされてきたーー今を生きるかぞくの声を映画館で届けたい!映画『ふたりのまま』劇場公開プロジェクト