全米アジア・太平洋諸国クィア連盟 (NQAPIA) インタビュー その3
-お二人のご両親は養子縁組についてどう思いましたか?
クリス:
母にカミングアウトすると私のことを受け入れてくれましたが、孫のいるおばあちゃんになれるとはおもっていなかったようです。
-確かに、日本でもLGBTであることで、子どもを持てないと思っている人は当事者でも多いと思います。
クリス:
母は養子の話をしたらとても喜んでくれました。マルコムは母の初孫でありながら唯一の孫です。実は、わたしには弟がいますが、ゲイでシングルなので(笑)
グレン:
私の場合、親へのカミングアウトは15年かかりました。実際コミットメントセレモニー(同性婚が認められる前にあった式)の時に母は来ませんでした。逆に父の方は来たがっていました。そして母は披露宴の方には来ました。子供が欲しいというと、母は黒人の子は血が繋がってないから他の孫と同じ扱いは出来ないと言いましたが、病院からマルコムを連れて帰ると喜んでくれました。マルコムは母にとっての5番目の孫です。
‐初孫だったクリスさんの親御さんと、五番目の孫だったグレンさんの親御さん。
人種のことを含めて、親御さんも又また違った環境で、同じ子供の事でも受け入れ方もそれぞれやはりかなり違うものですね。
日本でもよく、親は孫を見たらかわいくて仕方がなくなる、反対していても、産んでつれていったら目尻が下がると話を聞きます(笑)
-お二人を含めて、 LGBTQが子供を持つことについてどう思いますか。又実際に当事者としてお子様がいらっしゃる場合、生活していく上で、困ったことなどはありますか。
グレン:
私達はニューヨークに住んでいることで、とても運が良いほうだと思います。周りにも様々な形の家族がいるのでゲイカップルであっても、それ程問題はないです。でも頻繁に子どもの母親の居場所を聞かれることがあります。
-子どもを見たら母親をつなげて考えるという部分は、まだまだあるのですね。
グレン:
そして私達が異なる人種であるという問題もあります。アメリカでも白人とアジア人の子どもが黒人なのが奇妙だと思われます。アメリカでは養子をもらう側にとって一番望ましいのが白人、次に黒人の女の子、そして最後に黒人の男の子です。これは黒人の男性は暴力的だというステレオタイプがまだまだ根深いイメージとして残っているためです。アジア系のティーンは妊娠することがあまりないのでアジア人の子どもはあまり養子に出されることがないです。
-様々な人種が暮らしているアメリカならではの視点ですね。人種によって子どもが区別されるのも、日本ではなかなか想像ができないことですね。
日本で同性カップルが養子をもらうことに関して強く反対する声に関してはどう思いますか?
グレン:
日本人に対して上から物を言うアメリカ人にはなりたくないので、ちょっと言いがたいですが、日本には独特の価値観があり、その価値観によってこれほどまでに強い国になったと思うのですが、同時にマジョリティーに属していない方にとっては大変な国だと思います。
同性愛者による養子縁組はアメリカでも20年ぐらいの歴史しかないです。同性婚はありますけど差別を受けない自由は無かったりします。例えば日曜日に結婚式を行ったレズビアンが月曜日に同性愛者という理由で会社をクビになったこともあります。これも合法です。養子をもらえなかったり、養子縁組の申し込みに苦労する州も未だに存在します。
でも一番大事なのは全ての人々がセクシュアリティやジェンダーアイデンティティーに関わらず自分らしく生きることです。全ての人に好きな人と結婚をして、家庭を持つ選択肢があるべきです。
-同性婚が合法であって、又性的マイノリティであることを理由に解雇することもまた合法である。なかなか衝撃的な話です。違法であるかどうかと、人がどう思うか。いかにその二つが同じでないかがわかります。自由の国アメリカでさえ、又アメリカだからこそ、どちらの意見の尊重されるのかもしれないですね。
それでは子どもを持っているLGBTQの家族に対してメッセージをお願いします。
グレン:
現在、子どもが赤ちゃんなら今を楽しんで下さい、今のうちだから(笑)
ティーンならいま我慢すればいつかは良くなると言いたいです。
親は強くても、子供にはサポートが必要です。子供は親のことは聞かないけど他の子供の言葉には傾けるので様々な人と繋がりを持ちましょう。
最後に子どもを持ちたいと思っているLGBTQに対してメッセージをお願いします。
クリス:
(子供を持っている立場として)子どもを持つ価値はあると思います。
グレン:
(難しいことは多いかもしれないけど)きっと大丈夫、できます。
わたしは、子どもを持ってから今まで以上に幸せだったことがないです。
家庭をもってパートナーがいて、仕事があって、子どもがいて、日本のような美しい国に家族旅行にもこれますしね。
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クリスさんとグレンさんの間で、ゲームをして遊んだりスナックを食べるマルコム君。その姿はあたり前ですが、その辺にいる10歳の子が親といる姿と、何ら変わりありませんでした。
子どもが欲しいと思うこと、又、子供を育てたいという精神は、セクシャリティが何であっても、性別がなんであっても、国籍や人種が何であっても変わらないことを改めて感じました。もちろん、そこに至るまで、また子供ができてから起こる課題、LGBTQだからこそ直面することも出てくると思います。
特に日本ではLGBTQに関する法整備は進んでいるとは全く言えないため、
子どもを持つまでのハードルは決して低いとは言えない状況です。
改めて日本の遅れを感じるとともに、幸せそうな家族の姿をみて、子どもが欲しい人が子供を持つことが、もっとより身近で、最終的に持てるかどうかはわからなくても、その選択できることが自然であるべきだと思いました。
お話を聞かせて下さったグレンさん、クリスさん、マルコム君、マーシャさん、アヤさん、本当にありがとうございました。